第81章 君を職場まで送る

長谷川栞は、中野蓮の小さな思惑に気づいていた。けれど、あえて口にはしない。

蓮の小さな頭がそっと肩に寄りかかってきて、栞は視線を落とした。

雛が親鳥に甘えるみたいに、蓮は彼女に身を預ける。栞がそちらを見ると、蓮は何か言いたげで、同時に不安げな目で見返してきた。

栞はその「寂しそうな様子」に気づかないふりをして、傍らの苺を手に取り、ひと口かじる。

ぱっと蓮の目が輝いた。さらにぴたりとくっついてくる。次の瞬間、押しのけられるのが怖いみたいに。

珍しく静かな時間だった。栞の意識は蓮から外れ、ノートパソコンの画面へ向く。

蓮がわざわざ選んだ、大きくて甘い苺をいくつか口に運びながら、資料と...

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